値下げ交渉に対する根本的な考え方(後編)
前編からの続き
値下げ交渉されたとき、そのまま応じるのではなく、
質を上げたり量や数を増やしたりすることによって相手の要望を満たすのです。
例えば、原価が10個で500円のチョコレートを、10個セットで1000円で売っているとします。
もし5割の価格交渉が入ったとき、
1000円を500円に下げてはいけません。
1000円のまま、10個を15個に増やして、「5割アップしました」と言って対応するのです。
お客は満足する可能性が高いです。
価格を50%下げるのではなく、質(この例では数)を50%上げます。
そのほうが、そのまま値下げした場合と比べて売上は倍となり、
利益は0円ではなく何と250円が確保されます。
5割値下げしたら売上が半分になり、利益が消えてしまうのに対し、
内容量を5割増やしたら、しっかり利益が確保できているのです。
すなわち、「安くなりませんか?」と頼まれたら、「分かりました」と言って何かおまけしてあげる理屈です。
そして、お客からの交渉ではなく、逆にこちら側が値上げしたい場合も、
質を上げたり量や数を増やしたりすることで対応します。
先ほどの10個セットで1000円で売っているチョコレートの例だと、
12個で1500円に値上げする感じです。
なお、日本における商品やサービスの値段は、基本的に値上げする発想が存在しません。
原価が高くなったのに、価格を据え置いたまま商品の中身や質を減らす日本独特の手法は、
ステルス値上げと呼ばれています。
根本は、バレなければ構わない、という発想ですが、
値上げによってお客が不機嫌になることを異常に恐れる、
日本人の臆病な商習慣が露呈しています。
しかし、原価が上がったときはやはり値上げすべきです。
質を下げたり数や量を減らすのはビジネスとして間違っています。
激安や割安で提供するのは当然なのですが、
お客が満足しないときは質を上げるべきですし、
仕入れがどうしても高くなった場合は変にお客を恐れずに値上げすべきです。
賃貸の不動産だと、部屋がボロくなったときは、
家賃をそのままで貸すのではなく、
ある程度直して、相場より安い範囲で家賃を上げるべきです。
この類の話では、貧乏な人に申し訳ないとか、値下げしたほうが喜ばれる、などと言う人が多いです。
私が思うに、相手が貧乏であることに自分が責任を負うのはおかしいです。
相手が貧乏なのは、シンプルに相手の人生の課題であり、こちらは無関係なのです。
また、値下げがお客の喜びに直結するとつい判断してしまうのは、浅はかな思考の癖です。
実のところ、お金ではないところに真摯に向き合うことのほうが、相手にとって気持ちが伝わります。
例えば、値下げを要求してきたお客に対し、
なぜお金が足りないのか理由を聴き、
もしそれが健康保険料ならば、減免などの制度を教えてあげるとか、
奥さんの無駄遣いが原因ならば、いろいろとその愚痴に耳を傾ける、といった具合の対応です。
そもそも、貧しい人であればあるほど本質的にはお金に執着していません。
もしお金に執着しているなら、経済的に豊かになっているはずです。
貯金19万の人へ18万の商品を売ることに何のちゅうちょも要らないし、
逆に、貯金10億の人が1万や2万でもしっかり節約することについて批判するのもおかしな話なのです。(written by 廃墟不動産投資家)