「バブルよ、終われ」
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京都の古いボロ屋敷は、史上最高を更新し続ける旅館バブルでほとんど消滅していくこととなりそうです。
私の取扱物件でも、巨額の買値をあちこちから見せつけられて、
オーナーもついに売却を決意するケースが次から次に出てきています。
例えば、準一等地のボロ屋を、私は2万で借りて入居者に3.9万で貸しています。
毎月、私は1.9万、オーナーは2万の利益です。
しかし、その土地の価値は今では40,000,000~50,000,000円で、
不動産屋さんが購入後に更地にして、
開発業者が旅館を新築して1泊4~5万の部屋を3室作り、
稼働率が仮に5割だとしても1ヶ月の収益は2,000,000円以上となり、
年間24,000,000円なので利回り10%でも240,000,000円(2.4億)の投資商品に化けます。
そのため、2億4千万のポテンシャルのある土地で細々と月2万ほどの慈善事業を営む私やオーナーは格好のターゲットとなり、
どんどん地上げの猛烈な嵐に襲われています。
具体的には、入居者を追い出すための立ち退き費用がオーナーに積まれて、
借り主である私や入居者はそれを受け取り、出ていくこととなります。
私の空き家事業(廃墟不動産投資)はどんどん京都から撤退していくこととなります。
私の取扱物件は以前は京都が8割でしたが、今後は3割ほどにまで激減していきます。
周辺の大阪や滋賀・岐阜へと軸足を移しています。
経済的には京都の街も、オーナーも私も入居者も、買い主となる不動産屋も開発業者も皆、潤います。
数千万や億単位の金が動く中、私や入居者に入る立ち退き費用はせいぜい100~300万ほどですが、
貧しい人が多い入居者にとっては年収に匹敵するとんでもない額であり、
私にとっても、地上げされる物件を十数軒抱えているため、それなりの金額が入ることとなります。
毎月わずか2万ほどを小さく受け取っているより、世の中のバブルに便乗して、
立ち退き料や引っ越し代をどんどんもらっていけば、
黙っていても億単位のマネーが次々に転がり込んできます。
立ち退きは裁判なども駆使して徹底的に争っていけば、もっと高額の補償が取れる見込みです。
しかしながら、どうしてもモチベーションが高まりません。
不動産はとにかく儲かります。
もはや、年収1億では珍しくとも何ともなくなっているらしく、
納税1億でやっと、すごいと思われ始めるようです。
正直、なぜこんなに簡単に稼げるのか、
頭をかしげてしまうほど、大きなお金がゴロゴロと転がっています。
ただ、自分がコツコツやってきたことが、どんどん億単位の大型開発に変わっていき、
数年後には跡形も無くなってしまうことに、どうしても違和感を持ってしまいます。
だからと言って、お金を受け取らないという選択を取ったとしても、
所有権を持つ人の意向や世の開発の流れは何も変わらないので、
あくまで現実主義者の私は粛々と補償を受け取っていきます。
高級車や高級腕時計に興味が無い私にとっては、
バブルから染み出たほんの一粒二粒の雫に手のひらを開くだけであっても、
ますます、一生働かなくても全く生活に困ることのない、
経済的には超イージーモードが強まることとなります。
家賃3~4万でボロ屋を少しずつ直しながら暮らしてきた入居者は、
今まで住んだことのない、オートロックでフルリフォーム済の、家賃8万や10万の普通のマンションを経験し、
その快適さに、もう古い戸建てには戻れなくなるものと予想します。
皆がどんどん豊かになり、
街は旅館バブルで異常なほど活性化し、
私もますます働く必要性が消えていきます。
私はなぜ、それを寂しく思ってしまうのでしょうか?
貧しくてボロい家に住みながらも、
皆でワイワイ直しながら、時折すきま風が入ってきて思わずそれを笑ってしまうような、
古き懐かしき時代との別れが寂しいのかもしれません。
富と豊かさは未知なるスピードをさらに超えて加速し、
不動産業界のバブルはもはや頂点を見失ったかのごとく、
まぶしく熱い天を駆け抜けていき、
1万円や10万円などまるでうまい棒の代金のように極小化されて扱われ、
私も例に漏れずその波に飲まれ、いずれは30万や50万などがはした金のように意識が狂っていくことでしょう。
「バブルよ、終われ」
なぜだか正確に説明できないのですが、心からそう叫んでしまいます。(written by 廃墟不動産投資家)
Comment
あきれ果てたる高値が付いたとき、そこが必ず天井となります。
大正末期のバブル、昭和末期のバブル、
そして今回、平成末期のバブル、
新しい元号になって、暫くして、必ずバブル崩壊となっています。
歴史は繰り返します。
ありがとうございます。
なるほど、心配しなくてもバブルは終わるようですね。
狂った現状をしばし静観してみます。