無料で得ることの本質 続き
前回からの続きです
なぜなら、そこは郵便局の窓口で、すぐ前に受付の人がいるので、
単に付せんをもらえば済む話だからです。
付せんは50円なのか100円なのか知りませんが、無料ということより、
わざわざそれを買いに行く手間と時間のほうが圧倒的にもったいないです。
空き家のリフォームでも、少し屋根の上とか高いところの様子を見たいとき、
本職でもないのにハシゴをホームセンターにまで買いに行く人が多数です。
「今後、自分は日常的にこれを使うんだ」と決めているのでなければ、
ハシゴなど隣の家とか近所の人に借りればそれで足ります。
ハシゴは少し大きめの一軒家の人ならたいてい持っています。
また、以前、ネットカフェで文房具ののりを借りようとしました。
店員さんは意地悪なのか思考が停止していたのか、
「のりはこちらで販売していますのでご購入ください」と答えました。
私はトンチを利かせて「あ、そっすね、次回からそうします (o^^o)/」と言って、無事にのりを借りました。
他にも、どこかの飲食店で、会計のところにキットカットが置かれていました。
焼肉屋さんのガムのように持って帰ろうとしたところ、
「お客さん、それ、お渡しするものじゃないんです」と止められました。
売り物でもなくなぜそこにキットカットが置かれているのか謎でしたが、
ここでも私はトンチを使い、「すみません、間違えました、もしよろしければ、これ、いただけますか?食べたいと思ったんです」と頼みました。
店主さんは少し困った感じでしたが、「え~、ん~、どうだろう」と迷っていたので、
「キットカットが欲しいです……」とさらに念押ししたところ、普通にもらえました。
このキットカットの例を解説すると、私はそのお店のLINEに登録したわけでもなく、
ポイントをフルで貯めたわけでもありません。
ただ「もらいたい」という気持ちをそのまま表現し、正直に頼んでみただけです。
相手に何か価値を提供したわけでもなく、入力作業や労力なども全く発生していません。
これこそが、無料で何かを手に入れるということなのです。
リンゴ農家の畑を見て、「あ、美味しそうですね、そのリンゴ、食べてみたいです、もちろん、落ちてるので構いません」と素直に声をかけることなのです。
文房具でも傘でもフルーツでも、
ハシゴでも工具でも食事でもお茶でも同じです。
今回の話については、「Give and Takeに反するのではないか?」と疑問を持たれる方もおられるでしょう。
お金を払って商品を得たり、アプリをダウンロードした特典として商品を無料でもらったりするのが「Give and Take」なら、
ただ頼むだけで何かをもらうのは「Take Only」です。
しかし、ここには何と、本来の人間が持ち合わせている叡智が隠されています。
実は、ただもらうだけであっても、それは与えていることになっているのです。
本来、人は誰かの役に立ちたいという自然な欲を持っています。
無料で何かをもらうというのは、その「誰かの役に立つという喜び」を提供している、と言えるのです。
例えば、誰かから使っていない傘を借りたりもらったりしても、相手は損しませんし、
そもそもほとんどの家庭ではビニール傘を余らせているので、減ったほうが嬉しい人は多いですが、
そんなことよりも、こちらとしては雨が降ったときに傘を借りられると当然ありがたいから、本心から感謝の気持ちを伝えられます。
傘を提供した相手も、傘をもらって感謝している自分も、お互いが「Give」しています。
つまり、相手は不要な傘をGive、自分は感謝の気持ちをGiveなので、
なんと「Take Only」でもなく「Give and Take」でもなく「Give and Give」だったのです。
お互いが善意を交換できている状態です。
お金を払って何かを得たときとは全く異なります。
もちろん、企業のキャンペーンの無料とも別物です。
いろんなモノやサービスを他人から無料で借りたりもらったりすることにより、
無駄な費用や時間を削減し、持ち物を減らして不要な心配をなくせます。
しかし、それよりもさらに、無料で得ることが持つ重要な意味とは、
世の中の取引を構成している「Give and Take」を「Give and Give」に転換するという、
非常に大きな価値の創造だったのです。(written by 廃墟不動産投資家)